こんにちは、Dr.komakoです。
秋になるとセンチメンタルな気分になるの、私だけじゃないはず。もし単なる「センチメンタル」じゃすまされないくらい気分が落ち込んだり、睡眠状態や食欲に変化があらわれてきたら、それはうつ病のせいかもしれないわ。うつ病は悪化するととても厄介な病気よ。でも、早めに対処すれば重症化せずに治すことができるわ。
季節性うつ病(季節性感情障害)に注意!秋~冬の気分の落ち込みの原因と改善方法
季節性うつ病(季節性感情障害)とは?
季節性うつ病は、その名の通り、季節によって日常生活に支障があらわれるほどの気分の落ち込みが起こる病気なの。うつ病(感情障害)の一種なのよ。
季節性うつ病は、10月~11月から気分の落ち込みや睡眠状態、食欲の変動が起こってきて、ほとんどの場合3月頃から自然に症状が改善していくの。
特徴的な症状は次の通りよ。
- 抑うつ
- 気分の落ち込み
- 倦怠感
- やる気が出ない
- 集中できない
- ネガティブになる
- 起きられない
- 昼間に睡魔に襲われる
- 睡眠時間が増える
- 食欲が増す(特に炭水化物や甘いものが欲しくなる)
この症状の中でも、睡眠時間が長くなったり、起きられない、昼間もねむたいといった過眠傾向と、食欲が増して過食傾向になることが季節性うつ病特有の症状なの。
一般的なうつ病では、睡眠に関しては「眠れない」「夜中に目覚める」「朝早くに目覚める」といった、睡眠が充分に取れない状態になるわ。それに、食欲もなくなってしまうことの方が多いのよ。
季節性うつ病(季節性感情障害)の原因は?
季節性うつ病(季節性感情障害)発症の原因
季節性のうつ病の原因は、日照時間の変化なの。
秋から冬にかけて、朝日が昇る時間が遅くなって、日が暮れる時間が早くなるでしょう。私たちがお日様の光を浴びる時間は、10月を過ぎると急激に減って行くの。
日照時間が減ることによって、大きな影響を受けるのがセロトニンという脳内物質よ。
人間の脳って、無数の神経細胞からできているの。神経細胞から神経細胞にたくさんの情報を送り合っていろんな情報を処理して健康で安全に生活できるようにコントロールしているのよ。
神経細胞の情報を伝達しているのが「神経伝達物質」というものなの。
神経伝達物質は、大きく分けて3つあるの。
-
セロトニン:覚醒状態の維持、心の安定に働く
-
ノルアドレナリン:気分を高揚させる
-
ドーパミン:やる気や意欲をおこさせる、満足感をあたえる
うつ病の発症には、セロトニンが深く関係しているの。うつ病の人は、セロトニンの分泌が少ないということが分かっているのよ。
セロトニンは、太陽の光を浴びることで合成されるの。日照時間が少ないと、セロトニンが作られる量が少なくなってしまうの。
それだけではないわ。
セロトニンを含む脳内の伝達物質は、過剰に分泌されるといろいろな不具合を生じるの。だから、過剰に分泌された神経伝達物質は神経細胞に再度取り込まれて一定の量になるようにコントロールされているの。
セロトニンに関しては、「セロトニントランスポーター」がセロトニンの再取り込を行ってセロトニンの量をコントロールしているの。
日照時間が短くなると、セロトニントランスポーターの働きが強くなって、セロトニンを必要以上に再取り込をしてしまうの。すると、セロトニンの量がますます少なくなってうつ病を発症しやすくなるのよ。
季節性うつ病(季節性感情障害)と睡眠の関係
ではなぜ、季節性うつ病になると過眠傾向になるのかしら?
鍵を握っているのは、「メラトニン」というホルモンよ。
メラトニンは、睡眠をコントロールし、体内時計をコントロールしているとても重要なホルモンなの。
人間の体内時計ってもともと25時間に設定されているの。このままだと、地球の自転と体内時計がどんどんずれて行ってしまうわ。
それをコントロールしているのがメラトニンなの。メラトニンは、朝日を浴びると、身体の中からきれいさっぱり消えてしまうの。メラトニンが消失するときに、体内時計がリセットされ、交感神経が働き出して体が活動を始めるの。
メラトニンは夕方になると合成され始め、夜一定の量に達すると眠気を起こすの。生活リズムが整っている人は、大体同じような時間に眠たくなるんじゃないかしら。これは、メラトニンのせいなのよ。
メラトニンの減量になっているのがセロトニンなの。日照時間が減ったせいでセロトニンが少なくなってしまうと、メラトニンも充分に生成されないわ。
それに、冬は朝起きた時にまだ暗いでしょう?メラトニンの働きが弱まっているところに光による刺激が足りないと、メラトニンが消失して体内時計がリセットされないの。
だから、朝になってもなかなか目覚めることができないし、日中もメラトニンの影響を受けて眠気に襲われてしまうの。
季節性うつ病(季節性感情障害)と食欲の関係
通常のうつ病では低下してしまう食欲が、季節性のうつ病では亢進してしまうのはどうしてなのかしら?
実はセロトニンは食欲を抑える働きを持っているの。日照不足によって急激にセロトニンが減少すると、食欲が亢進してしまうのよ。
ビタミンDは陽の光を浴びることで合成されるの。日照時間が少なくなると合成されないのはセロトニンだけではなくて、ビタミンDもなのね。
ビタミンDは血糖値のコントロールに一役買っているの。ビタミンDは体内に入ると活性化ビタミンDという物質に変わるの。活性化ビタミンDはすい臓のβ細胞に作用して、インスリンの分泌を促すの。ビタミンDが不足するとこれらの機能が上手く働かなくなってしまうと考えられているの。
血糖のコントロールが上手く行かないため、本当に必要ではないのに糖類を補おうとするわ。だから、糖質である甘いものや炭水化物が欲しくなるの。そこに、セロトニン不足による食欲亢進が輪をかけてしまうのよ。
季節性うつ病(季節性感情障害)の改善方法は?
生活習慣で改善させる
季節性うつ病を改善するために最も効果的な方法は、朝しっかりと光を浴びることなの。
季節性のうつ病を改善させるのに必要な光は、2500ルクス以上の光よ。治療効果は、「光の強さ×光を浴びる時間」で変わってくるの。
- 2500ルクス(晴れた日の屋内)×2時間
- 5000ルクス(雨の日の屋外)×1時間
- 10000ルクス(晴れた日の屋外)×30分
を目安に光を浴びるといいわ。通勤の時、一駅歩いてみるとかね。もし可能なら、仕事や学校で過ごす席を窓際の日の光が当たる場所に変えてもらうのもいい方法よ。
時間がないという人は、季節性うつ病の治療のために開発された「高照度光照射装置」を使うのもいい方法よ。機械は少し高いけど、医療機関でも使われているだけあって、かなりの効果を期待できるわ。
季節性のうつ病って、北国の日本海側に多いの。北に行くほど、冬の日照時間は短くなってしまうし、日本海側って雨や雪が多くて日照時間が短いでしょう?
北国のある有名大学では、冬季に自殺する生徒が多くて問題になっていたの。そこで、この「高照度光照射装置」を学生なら誰でも使えるようにしたところ、自殺する学生が劇的に減ったんですって。
高照度光照射装置の詳しい使い方はこちらの記事が参考になるわ。
日に当たるという対策以外に、季節性のうつ病を改善させるには、自律神経を整えることを心がけてみて。
日中はできるだけ活動的に過ごして、夜間はできるだけリラックスするの。うつ病になると自律神経が乱れて、交感神経優位になってなかなかリラックスができないわ。だから意識的に気分をゆったりさせてね。
- ぬるめのお風呂にゆったりとつかる
- 副交感神経を刺激するアロマをたく
- 夜間はスマホなどの明るい光を見ないようにする
副交感神経を働かせることで、睡眠のリズムも整いやすくなるわ。
栄養面で改善させる
セラトニンはセラトニンを合成するときに必要な食品を積極的に取ることで増やすことができるわ。
セロトニンを増やすには、まず、セロトニンを生成するトリプトファンという必須アミノ酸を増やすの。
トリプトファンを増やす食品は、次の通りよ。
- 乳製品
- 大豆製品
- 青魚
- ナッツ類
- バナナ
- 小麦胚芽
- 卵
トリプトファンを増やす食品とともに、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムをとるといいわ。
- ビタミンB6:サンマ、ニンニクなど
- ナイアシン:きのこ類、緑洋食野菜
- マグネシウム:海草類
ただ、うつ病になると頭が働きにくくなるし、気分が落ち込んでメニューを考えるのもおっくうになってしまうと思うの。そんな時は、サプリメントを利用するのがおすすめよ。
ひどくなる前に病院へ
「季節性のうつ病は春になると治るから、我慢しよう。」
そう思ってしまうのはとても危険よ。うつ病は知らないうちに悪化して、自分自身を死に追いやってしまう恐ろしい病気なの。
病院でお薬を飲めば、短期間でとても楽になるの。だから、「秋になると気分が落ち込んで何も手につかない…。」という人は、一度メンタルクリニックに行ってみて。無理して苦しみを長引かせる必要なんて、どこにもないのよ。
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