インフルエンザ脳症とは?
こんにちは、Dr.komakoです。
インフルエンザ脳症はインフルエンザにかかった子どもが意識障害やけいれん、異常行動を起こして全身状態が急激に悪化し、命に関わる状態に進行するの。インフルエンザ脳症は決してよくおこることではないけれど、年間で100人以上の子どもがなくなっているわ。
インフルエンザ脳症とは?
インフルエンザ脳症ってなに?
インフルエンザ脳症っていうのは、インフルエンザウイルスへの感染がきっかけになって起こる急性脳症の事よ。ウイルスが直接脳に炎症を起こすインフルエンザ脳炎とは違って、インフルエンザウイルスに感染したことがきっかけで脳が腫れた状態になるの。
インフルエンザ脳症は大体4つの型に分類することができるわ。
サイトカインストーム
急性壊死性脳症や出血性ショック脳症、ライ様症候群にさらに分類されるわ。過剰な免疫反応によっておこると考えられ、血液中の炎症性サイトカインが増えてしまっているの。CTをとると脳全体が腫れあがっているのが分かるわ。急速に進行して多臓器不全を起こし、死亡率が高い脳症よ。
興奮毒性
感染して1日目に10分以上続くけいれんが起こるの。この時にCTをとっても異常が見つからないことがあるわ。2日目は意識もはっきりしてきて、食事をとれるくらいに回復するけれど、何となく元気が無かったり、視線が合わなかったりするの。2日目でもまだCT検査では異常は発見されないわ。
3日目から7日目に再びけいれん発作と意識障害が起こるの。この時になってやっとCT検査で異常が認められるようになるわ。
意識が回復してからは、言葉があまり出なかったり、自発性が低下したりといった神経症状があらわれるの。CTをとると、脳が委縮しているわ。良好に回復していく人は、数週間から数か月で元の状態に戻って行くの。
中には、知的障害や難治性てんかんが後遺症として残ってしまうことがあるわ。
代謝異常
先天性の代謝異常を持っている子がインフルエンザ脳症にかかりやすいことが分かっているの。インフルエンザ脳症を発症して初めて先天性の代謝異常が見つかることもあるわ。
血液検査で代謝異常型のインフルエンザ脳症だとわかったら、代謝異常を改善する治療を行うの。
その他
常軌の3つのインフルエンザ脳症に分類できない病態があって、可塑性脳梁膨大部病変といわれる比較的軽症の脳症などがあるわ。
インフルエンザ脳症の症状
意識障害
インフルエンザ脳症でもっとも特徴的な症状よ。意識障害には3段階あって、最も重篤な意識障害では、痛みのある刺激をしても目を覚まさない状態よ。
声を掛けたりあやしたりするとかろうじて眼をあけるような状態や、意識があっても元気がない、笑わない状態でも軽い意識障害を起こしていると考えていいわ。いつもと違う様子があらわれたらすぐに病院へ行きましょう。
けいれん
子どもが熱を出した時、けいれんはよくおこることよ。でも、長い時間起こるけいれんや、繰り返すけいれんはインフルエンザ脳症の症状である可能性が高いわ。短時間のけいれんでも、その後に意識障害が起こったり、異常行動や異常言動が見られたら、インフルエンザ脳症の疑いがあるわ。
異常行動・言動
インフルエンザ脳症の前駆症状として異常な言動や行動があらわれることがあるの。
代表的なのは以下の通りよ。
- 母親の顔が分からない。いないはずの人がいるという。(人を正しく認識できない)
- 手を食べ物と間違えて噛むなど、食べ物とそうでない物の区別がつかない。
- アニメのキャラクターや動物などが見えるといいた幻視・幻覚
- ろれつが回らない・意味不明な発言をする
- おびえた表情、恐怖感
- 急に怒る・泣く・笑う
これらの異常言動は、インフルエンザ脳症でなくても起こることがあるの。こんな症状が1時間以上続いていたり、意識状態が悪い時は、脳症を疑う必要があるわ。
インフルエンザ脳症を起こすインフルエンザの型は?
インフルエンザ脳症を起こすのはA香港型とH1N1/09がインフルエンザ脳症を起こしやすいわ。
A香港型では、乳幼児がインフルエンザ脳症を発症する確率が高くて、H1N1/09型は学童期の子どもがインフルエンザ脳症を発症する可能性が高いの。
インフルエンザ脳症の診断
意識障害の有無
呼びかけないと起きないような意識障害がある時はインフルエンザ脳症である可能性が高くなるわ。でも、幼児の意識障害の診断は難しいから、他の検査もしっかり行う必要があるわね。
頭部画像診断
CTやMRIなどの画像診断は重要よ。急性壊死性脳症やけいれん重積型急性脳症では、CTの画像診断が決定的な証拠になるわ。ただ、異常があらわれないからと言って安心できないの。CTやMRIで発見できる異常所見は、症状があらわれてから数時間から数日遅れてしまうのよ。意識障害やけいれん発作がある時は、入院して繰り返しCTをとる必要があるわ。
髄液検査
髄液検査は髄膜炎や脳炎ではないことを証明するための検査よ。
血液検査
血液検査で多臓器不全や血液凝固異常があればサイトカインストーム型の脳症だということが分かるわ。代謝異常型の脳症であることも、血液検査の結果で分かるわ。
インフルエンザ脳症の治療
インフルエンザ脳症の治療では、まず全身状態を悪化させないための支持療法がおこなわれるわ。インフルエンザ脳症の治療は、高度な医療を行える大きな病院に入院して行う必要があるわ。
支持療法
- 心肺機能の安定化:気道確保、呼吸管理、循環管理、水・電解質、血糖値の管理
- 中枢神経の安定化:けいれん治療、頭蓋内圧低下
- 体温の管理:冷却、アセトアミノフェン
特異的治療
インフルエンザ脳症の治療では支持療法に加えて抗ウイルス薬などの治療を行っていくわ。
- 抗ウイルス薬
- メチルプレドニゾロンパルス療法
- γ‐グロブリン大量静注療法
特殊療法
インフルエンザ脳症の治療では、支持療法と特異的治療が基本的な治療よ。それに加えて、次のような治療方法を行うことがあるわ。
- 脳低体温療法
- 血液浄化療法
- シクロポリン療法
- アセチトロンビン‐Ⅲ大量療法
- フリーラジカル消去薬
インフルエンザ脳症の致死率
インフルエンザ脳症は、1990年代後半では致死率は30%にも上っていたの。でも、医療技術の発展や、いろいろな治療法の導入で、現在では8%ほどまで減少しているわ。
インフルエンザ脳症は急激に進行して、朝は元気だったのに夜には意識が無くて点滴をしているような展開も珍しくないの。とにかく、一刻も早く治療を開始することが大切よ。そして何より、ワクチンを接種して感染の可能性や重症化する可能性を低くしておくことが大切よ。
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